鍛冶屋生活ONとOFF

-刀鍛冶のモダンライフを書き綴る-

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最近妻が図書館で、「智恵子抄」を借りてきました。

妻は、高校生の時に。私は修行中に読みましたが、十代の私達には、この詩集があまりピンと来なかったように記憶しています。
しかし、40代も近くなった今では、言葉の美しさに感動を覚え、心にしみる一節が多くあるものです。
昔読んだ本を読み返すのもいいものです。
歳を重ねると、様々な想いに共感できるようになるものですね。

今朝早く起きると、雪がしんしんと降っていました。



―――深夜の雪――― 高村光太郎

あたたかいガスだんろの火は

ほのかに音を立て、

しめきつた書斎の電燈は

しづかにやや疲れ気味の二人を照す。

宵からの曇り空が雪にかはり、

さつき牕から見れば

もう一面に白かつたが、

ただ音もなく降りつもる雪の重さを

地上と屋根と二人のこころとに感じ、

むしろ楽しみを包んで軟いその重さに

世界は息をひそめて子供心の眼をみはる。

「これみやもうこんなに積つたぜ」

と、にじんだ声が遠くに聞え、

やがてぽんぽんと下駄の歯をはたく音。

あとはだんまりの夜も十一時となれば、

話の種さへ切れ

紅茶もものうく

ただ二人手をとつて

声の無い此の世の中の深い心に耳を傾け

流れわたる時間の姿をみつめ、

ほんのり汗ばんだ顔は安らかに満ちて

ありとある人の感情をも容易くうけいれようとする。

又ぽんぽんとはたく音の後から

車らしい何かの響き――

「ああ ご覧なさい あの雪」

と、私が言へば、

答へる人は忽ち童話の中に生きはじめ

かすかに口を開いて

雪をよろこぶ。

雪も深夜をよろこんで

数限りもなく降りつもる。

あたたかい雪、

しんしんと見に迫つて重たい雪が―――





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