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鍛冶屋生活ONとOFF

-刀鍛冶のモダンライフを書き綴る-

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お守り刀~家宝として~ 

Omamorigatana for a family treasure_1

この刀は、昔からご依頼主のお家に伝わっていた備前長船清光の刀を元に製作しました。

数年前、竹中半兵衛の地元より、遥々バイク仲間と鍛刀場まで見学にお越し下さりました。
今でこそ黒田官兵衛で盛り上がっていますが、今思うと見えないご縁があったのだと思います。

ご依頼を受けてから、私もご自宅までお伺いし、資料なども見せて頂きました。
写真や登録書から、長さや反り、銘などがわかりました。
茎の押し型も残っていましたので、それを元に資料を探しました。

その結果、備前長船清光の重ねの厚いごりっとした注文打ちの造り込みの姿を模しました。
刃文はお家に伝わった刀とは違いますが、私の得意な丁子刃での製作希望を受けました。

丁子刃といっても感じ方ややイメージが大きいので、ご一緒に藤代名刀図鑑やその他の資料から、
三点ほどイメージに近い刃文の刀を選び、毎日その写真を見ながら製作に取り掛かりました。

今回は差し込み研ぎで、そのままの刃文が見え、力強く品のある刀を作る事でした。
ハバキは中田育男氏にお願いし、ご依頼主の家紋である七つ星を上貝に入れました。

初めて、自分の刀に家紋の入ったハバキを着けました。
ハバキが大変重厚感がありますが、上手く私の刀と調和し力強さと品格のある作品に仕上がりました。

研ぎ:森井鐵太郎氏
鞘:森井敦夫氏
ハバキ:中田育男
撮影:Kei NAKAMURA, Spare Time Studio

長さ:75.1糎
反り:2.0糎

です。

こちらのブログで何度も書いた事ですが、私はご依頼主様に恵まれ生かされていると思います。
ご依頼主様のそれぞれの想いを受け止めて、その想いを形にすることは、時にはとてつもないプレッシャーを感じることもありますが、精一杯製作した作品をお見せした後の、ご依頼主様の優しい言葉や表情に救われる思いがします。

また、ご依頼を受けてから作品が完成するまでの長い月日の間に、ご依頼主様と多くの会話を通して、お互いを理解しあえる素晴らしい関係を築く事ができることが、私が刀鍛冶をしていて最も嬉しく誇りに感じることです。

これからも、この気持ちを忘れず、一振、一振に思いを込め、製作に励んで行きたいです。

また、ご依頼主様との末永いお付き合いがありますことを心より願っています。


タグ: 守り刀  お守り刀 
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友情の刀 

ご依頼主様は台湾の方です。

数年前問い合わせのメールをいただいてから、メールを交わすようになりました。
まだ私よりもお若い方ですが、「いつか高見さんの刀が欲しいです。少しずつ貯金して溜めて行きます。」とおっしゃって下さっていました。

いつも送って下さる職場での写真やご家族の写真を拝見させていただくのも私の楽しみの一つでした。
そんなある日、「高見さんの刀を注文させていただきます。」と連絡がありました。


tengaihirin.jpg


茎には、ご自身の座右の銘ではなく私の言葉を入れてほしいと依頼されました。
字配りなども考慮に入れると、やはり4字または5字熟語がバランスが良いと考え、悩みながら「天涯比隣」と言う言葉を選びました。

ご依頼主様とは、まだお会いした事がありません。
しかし、数年に渡りメールを交わしていくうちに、ご依頼主様に対する思いは「友情」に変わりました。
たとえ遠く離れていても、すぐ近くにいるように親しく思う友への想いです。

いつか必ず会いたい、いや会いに行こうと思っています。

長さ:74.0糎
反り:2.5糎

研ぎ:井上聡氏
鞘:森井敦央氏
ハバキ:中田晃司氏
撮影:Kei NAKAMURA, Spare Time Studio



タグ: 守り刀  お守り刀 
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守り刀を納める 

事後報告になりますが、今年の初夏、お守り刀をご依頼主様に納めさせていただきました。

ご依頼主様からご依頼があったのは昨年の秋の事です。
家宝として、そして枕刀として故人の一生に一度だけ使用したいとのことでした。

ご依頼主様は、決して愛刀家ではございませんでした。
まだお若いですが、古来からのならわしを大切にしたいと言う思いから、お守り刀を今のご年齢でお持ちになりたいと思われたそうです。

製作に入る前に、何度もお写真を見ていただきましたが、「刀は怖い」とおっしゃいました。
しかしながら、その怖さをこえて、ご依頼して下さる思いを受け止めたいと思いました。

何度もご依頼主様と話し合いながら、姿、地鉄、刃文のイメージができ製作に取り掛かりました。

Omamori_tanto_a.jpg

ハバキは品良く、金着二重ハバキです。
はじめ、ハバキもキラキラとしたものはあまり好きではないと言われました。
素赤、赤銅、銀、金と色々見比べて頂き、古来より言われる格のお話もしました。

Omamori_tanto_b.jpg

金であってもキラキラした磨地の金ではなく、細かな鑢が掛かり、小さな玉のある表面、
しっとりとした赤みのある金の色に納得していただけました。


Omamori_tanto_c.jpg


地鉄は板目に杢目交じり、強く、刃は冴えた互ノ目を焼き、切っ先突き上げて返る。

銘 表 高見國一作之
  裏 春光 平成廿五年吉日

研ぎ:森井鐵太郎氏
鞘:森井敦央氏 
ハバキ:中田晃司氏


Omamori_tanto_d.jpg


鍛刀場にて、お納めさせていただきました。
ご依頼主様は兵庫県から遠方でお住まいでしたので、お会いするのはこの時が初めてでした。

「やはり刀は怖いです」とおっしゃらないかと不安を感じながらお見せすると
打ち上がったお守り刀を手にされ、にっこり微笑んで下さり「綺麗だなぁ。素晴らしいお守り刀をありがとうございます。」
とおっしゃって下さったとき、私も、心の底から嬉しさがこみ上げてきました。


Oamori_tanto_e.jpg


ご依頼主様の抱かれるお守り刀の意味は、それぞれに違いますが、これからもご依頼主様の想いをしっかりと受け止め、今を生きる刀鍛冶として「想いをかたちにする」お手伝いをする存在であり続けたいと考えています。

これからも末永いお付き合いができることを願っています。

タグ: 守り刀  お守り刀  枕刀 
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お守り刀を納める No.2 ~喜寿のお祝いとして~  

銘切りをしました。

銘切りは、やはりいつも緊張します。
ご依頼主様の想いをしっかり受け止め、茎(なかご)にその思いを刻み込まなければなりません。


omamori gatana_1


寸延短刀(小脇差)

長さ 34.4 cm
反り 0.25 cm

表 播磨国住人 
  高見國一作之


omamori gatana_2


裏 清浄明潔
  平成癸巳年 春光

ご依頼主様のお父様のお名前である『明』と、健康祈願の想いからこの言葉を選ばれました。
季語は、春の光が差し込み、晴々しい喜寿のお祝いをイメージし私が選びました。
  

omamori gatana_kagoshima


上記の画像は、m2photoの宮田昌彦さんに撮影いただきました。
クリックし、拡大してご覧下さい。


ご依頼主様が遠方でお住まいであったため、お納めさせていただく日までお会いすることなくお電話やメールでやりとりしながら、作刀を進めていきました。
この様なことは初めてでしたので、ご依頼主様の描かれるイメージに合っているだろうか等々、お守り刀をご覧いただくまで心配でした。

鹿児島までお守り刀を納めに行くことを決めたのも、やはりお会いしお顔を拝見して手渡ししたいと言う強い思いがありました。

お会いするまで、お声の感じからお若い方かなと想像していましたが、その通りでした。
ご年齢をお伺いすると30歳との事でした。

ご依頼主様はお父様がご高齢でのお子様であったため、大学をご卒業されるまで、ご両親が大変な思いで育てて下さった感謝の想いを、喜寿のお祝いの際に、お父様がお好きな刀を贈り感謝の気持ちを伝え、少しでも恩返ししたかったからと私に話して下さいました。

私が30歳のときの事を思い考えた時、親への感謝の気持ちはありましたが、ここまでの深さはありませんでした。年齢に関係なく、素晴らしい人とお会いできて本当に良かったです。
又、偶然とは言え、ご依頼主様と私が同じ誕生日でお父様とも一日違いという信じられないような偶然も重なり、本当に不思議なご縁を感じました。
今回のお守り刀は、平成を生きる刀鍛冶としてご依頼主様の心を形にすることが出来たと思います。

これからも末永いお付き合いをしていきたいと願っています。

タグ: 守り刀  お守り刀   
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お守り刀を納める No.1 ~喜寿のお祝いとして~ 

以前のブログで少し触れましたが、鹿児島にお住まいのご依頼主様にお守り刀をお納めさせていただきました。
4月の事ですが、今日から紹介していきます。

sunnobi_tanto_1.jpg

ご依頼主様は、お父様の喜寿のお祝いとして何か特別な贈り物をと考えられていたところ、刀が厄除けのお守りになることを知られ、ご相談いただきました。

遠方でのお住まいでしたので、電話やメールを通してお話をお伺いしながら、寸延短刀(小脇差)を製作することになりました。
刃文は、寸延短刀なら逆丁子を焼かせていただきたいとお伝えしたところ、私の気持ちを尊重して下さいました。

sunnobi_tanto_2.jpg

研ぎ上がってきたばかりの寸延短刀です。
この度は、研ぎは森井鐵太郎さん、ハバキは中田晃司さん、鞘は森井敦央さん(鐵太郎と敦央はご兄弟です)にお願いしました。

sunnobi_tanto_3.jpg

刀の写真は、光の関係で大変難しいですが、今回は作品の持ち味が綺麗に写ってくれていましたので、とても見やすいと思います。

sunnobi_tanto_4.jpg

刃文はご依頼主様からお聞きしたお父様をイメージしながら、優しさの中に力強さや生命力を感じていただけるような匂い口の柔らかい逆丁子を焼きました。

sunnobi_tanto_5.jpg

地鉄は、刃中にも刃肌が現れ、鉄を鍛えた景色を楽しんでいただける仕上がりになっています。

sunnobi_tanto_6.jpg

ハバキは、喜寿のお祝いに相応しく最上級の金二重紗綾形ハバキをつけました。

後は、良い日を待ち銘切りです。

タグ: 守り刀  お守り刀 
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